ORTHOSTATIC DYSREGULATION

朝起きられない、立つとつらい。
その不調を「気持ちの問題」にしないために

起立性調節障害は、思春期に多くみられる自律神経機能の病気です。まず適切な診断と標準的な治療を受けることが大切です。そのうえで慢性上咽頭炎を伴う場合には、耳鼻咽喉科での評価やEATを補助的に検討することがあります。

朝起きられない立ちくらみ頭痛・倦怠感午前中に動けない

※EATは起立性調節障害そのものに対する標準治療ではなく、すべての方に効果が期待できる治療ではありません。

01

SYMPTOMS

このような症状はありませんか?

朝なかなか起きられない

午前中は調子が悪く、午後に動きやすくなる

立ち上がると、めまいや立ちくらみがする

頭痛や頭重感が続く

動悸や息苦しさを感じる

倦怠感が強く、疲れやすい

食欲がなく、腹痛や吐き気がある

学校へ行きたいのに身体が動かない

起立性調節障害では、立位や座位で症状が強くなり、横になると軽くなる傾向があります。日による変動が大きく、天候、睡眠不足、暑さ、心理的ストレスなどの影響を受けることもあります。

症状だけで決めつけることはできません。貧血、心疾患、甲状腺疾患、神経疾患、睡眠障害などでも似た症状が現れます。

02

ABOUT OD

起立性調節障害とは

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、立ち上がったときに必要となる血圧や心拍数の調節がうまく働かず、脳や全身への血流を保ちにくくなる病気です。

通常は立ち上がると重力によって血液が下半身に集まりますが、自律神経が血管を収縮させ、心拍数を調節することで血流を保ちます。起立性調節障害ではこの調節が不十分または過剰となり、立ちくらみ、めまい、頭痛、動悸、倦怠感などが現れます。

横になっているときと立ち上がったときの血流変化を比較した起立性調節障害の説明図
立ち上がると血液が下半身へ移動し、血圧や心拍数の調節に負担がかかります。

主な4つのタイプ

INOH

起立直後性低血圧

立ち上がった直後に血圧が大きく低下し、回復が遅れるタイプです。

POTS

体位性頻脈症候群

立った際に血圧は大きく下がらなくても、心拍数が過度に増加するタイプです。

VVS

血管迷走神経性失神

長時間の立位などをきっかけに、血圧低下や徐脈が生じ、失神することがあります。

DeOH

遷延性起立性低血圧

立ってからしばらく経過した後に、血圧が低下するタイプです。

03

MULTIPLE FACTORS

一つの原因だけで起こる病気ではありません

起立性調節障害には、身体の成長、自律神経、生活環境など、複数の要因が重なっていると考えられています。

01

循環調節の不調

立ったときに血管を収縮させ、血圧や脳血流を保つ働きが十分でないことがあります。

02

成長期の身体変化

身体が急速に成長する思春期は、循環調節が変化に追いつきにくい時期です。

03

水分・塩分不足

循環血液量が不足すると、立位での症状が現れやすくなります。

04

活動量と筋力の低下

症状のために動けず体力が落ち、さらに症状が強くなる悪循環が生じます。

05

睡眠・生活リズム

夜に目がさえて朝に起きられず、昼夜逆転につながることがあります。

06

心理社会的ストレス

ストレスだけが原因ではありませんが、学校生活への不安や無理解が増悪因子になります。

04

DIAGNOSIS

ほかの病気を除外することが重要です

朝起きられない、頭痛、めまい、倦怠感などは、起立性調節障害だけに特有の症状ではありません。症状の現れ方や日内変動を確認し、必要に応じて起立試験を行うとともに、似た症状を起こす病気がないかを調べます。

CHECK

鑑別が必要な病気

  • 鉄欠乏や貧血
  • 不整脈などの心疾患
  • 甲状腺などの内分泌疾患
  • てんかんなどの神経疾患
  • 片頭痛・睡眠障害
  • 感染後に続く体調不良
  • 摂食不足や脱水、薬剤の影響

URGENT

早めの専門的評価が必要な症状

  • 運動中に失神した
  • 胸痛や強い動悸を伴う
  • けいれんや麻痺がある
  • 突然の激しい頭痛がある
  • 体重減少や強い食欲低下がある
  • 症状が急速に悪化している

このような場合は、EATの適応を考える前に原因疾患の精査が優先されます。

05

STANDARD TREATMENT

起立性調節障害の基本的な治療

身体的な重症度と心理社会的な要因を評価し、一つの治療だけに頼らず、次のような対応を組み合わせます。

01

病気を正しく理解する

本人・家族・学校が身体の病気であることを理解し、本人を責めない環境を整えます。

02

水分と塩分を適切にとる

脱水や循環血液量の不足を防ぎます。基礎疾患がある場合は、主治医の指示に従います。

03

動作と運動を工夫する

急に立ち上がらず、体調に合わせた歩行などで筋力や体力の低下を防ぎます。

04

睡眠と生活リズムを整える

起床時刻、食事、日中の活動、就寝環境を無理なく少しずつ整えます。

05

学校と連携する

遅刻登校や別室対応など、その時点の身体状態に合わせた支援を検討します。

06

必要に応じた薬物療法

非薬物療法を続けながら、病型や症状に応じた薬物療法が検討されます。

06

NASOPHARYNX

慢性上咽頭炎との関連が注目されています

上咽頭は鼻の奥にあり、ウイルスや細菌、アレルゲンなどにさらされる、免疫組織の豊富な部位です。周囲には、自律神経に関係する神経経路もあります。

慢性上咽頭炎と倦怠感、頭痛、めまい、睡眠障害、ブレインフォグなどとの関連が研究されています。起立性調節障害やPOTSでも、上咽頭炎を伴う症例にEATを行い、症状が改善した臨床報告があります。

慢性上咽頭炎・EATについて詳しく見る
07

EAT

慢性上咽頭炎を伴う場合のEAT

EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy/上咽頭擦過療法)は、塩化亜鉛溶液を含ませた綿棒を鼻または口から上咽頭へ入れ、粘膜に塗布・擦過する治療です。「Bスポット療法」とも呼ばれます。

慢性上咽頭炎の局所治療として、塩化亜鉛の収れん作用などにより炎症を改善することを目的とします。自律神経症状への作用については研究が進められていますが、まだ十分に解明されていません。

EATEpipharyngeal
Abrasive Therapy

MAY CONSIDER

EATを検討する可能性があるケース

  • 慢性上咽頭炎が確認される
  • 後鼻漏やのどの違和感を伴う
  • 感染後から不調が続いている
  • 倦怠感、頭痛、頭重感などを伴う
  • 標準的な治療で改善が十分でない
  • ODの診断・治療をすでに受けている

PLEASE NOTE

知っておいていただきたいこと

  • EATはODの標準治療ではありません
  • 標準治療を中止して行うものではありません
  • 効果には個人差があります
  • 治療時に痛みや出血を伴います
  • 上咽頭炎がなければ積極的に勧めません
  • 変化が乏しければ治療方針を見直します
08

OUR APPROACH

当院でできること

当院は耳鼻咽喉科として、起立性調節障害の患者さんに慢性上咽頭炎や鼻・のどの病気が重なっていないかを評価します。

01

症状と経過の確認

発症時期、感染との関係、日内変動、これまでの診断と治療を確認します。

02

鼻・上咽頭・のどの観察

鼻咽腔内視鏡を用いて、鼻炎、副鼻腔炎、後鼻漏、慢性上咽頭炎などを確認します。

03

EATの適応判断

慢性上咽頭炎が確認され、治療による利益が見込める場合にご提案します。

04

必要に応じた他科連携

ODそのものの診断や全身管理が必要な場合は、小児科などでの評価を優先・併行します。

当院の役割は、起立性調節障害の治療をEATに置き換えることではありません。耳鼻咽喉科の立場から慢性上咽頭炎という併存要因がないかを確認し、治療の選択肢を補うことです。

診療の流れ

  1. 01

    問診

    症状、時間帯、感染歴、生活への影響、これまでの診断と治療を確認します。

  2. 02

    耳鼻咽喉科診察

    鼻・上咽頭・咽頭・喉頭を観察し、関連する病気がないかを確認します。

  3. 03

    治療方針の説明

    慢性上咽頭炎の有無、EATの適応、期待できることと限界をご説明します。

  4. 04

    治療と経過確認

    適応がある場合にEATを行い、所見と症状の変化から継続・終了を判断します。

09

FAQ

よくあるご質問

QEATで起立性調節障害は治りますか?
A

EATは起立性調節障害の確立した治療ではありません。慢性上咽頭炎を伴う一部の患者さんで症状が改善した報告はありますが、効果には個人差があります。

Q起立性調節障害と診断されていればEATを受けられますか?
A

診断名だけでは決めません。症状や経過を確認し、鼻咽腔内視鏡などで慢性上咽頭炎の有無を評価したうえで判断します。

Q小児科の治療を中止する必要がありますか?
A

中止する必要はありません。EATは標準治療に代わるものではありません。現在の主治医による治療を継続してください。

Q子どもでもEATを受けられますか?
A

当院では原則として小学校高学年以上を対象とします。ただし、痛みや出血を伴うため、安全に診察・処置を受けられるかを含めて個別に判断します。

Q鼻やのどの症状がなくても上咽頭炎はありますか?
A

自覚症状が目立たない場合もあります。ただし、全身症状だけで慢性上咽頭炎とは判断せず、診察と内視鏡所見を総合して評価します。

QEATは何回受ければよいですか?
A

一律には決められません。慢性上咽頭炎の状態、症状の変化、治療時の痛みなどを確認して判断します。変化が乏しければ、漫然と継続せず治療方針を見直します。

Q初診当日にEATを受けられますか?
A

診察で適応があると判断し、治療内容に同意いただければ当日に行える場合があります。診療状況や患者さんの状態によっては後日となることがあります。

FOR A BETTER UNDERSTANDING

起立性調節障害をEATだけで考えず、
鼻・上咽頭を含めて状態を確認します

小児科的な診断や標準治療を大切にしながら、慢性上咽頭炎が関係していないかを耳鼻咽喉科の立場から評価します。

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